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- 無痛分娩のご紹介
奈良県立医科大学附属病院では、2020年7月から産科医・麻酔科医・助産師で協力しあい、無痛分娩を行っています。
平日の日中:麻酔科医を中心とした管理
夜間や休日:麻酔科医のサポートのもとで産科医・助産師を中心とした管理
無痛分娩の対象となる方
@ 医学的にお勧めする方(心臓や血管、精神疾患などを合併する妊婦さん)
A 無痛分娩を希望される方
無痛分娩を行うことができない方
@体質や薬剤で血が固まりにくい方
A感染(麻酔の処置部分、全身性)
B脊髄疾患や一部の心疾患、その他、医師が適応でないと判断した方
無痛分娩の方法
無痛分娩とは麻酔を使って分娩の痛みを緩和する方法です。分娩に対する恐怖感を和らげ、分娩の痛みを軽減し、体力を温存して出産できることが利点です。
当院の無痛分娩は主に硬膜外麻酔という麻酔方法で行っています。腰から麻酔を行い、その効果は下半身に限局されるため、お母さんの意識を保ったまま出産することが可能です。
無痛分娩の始め方
陣痛が始まってから、もしくは陣痛を補助するお薬を開始する前に産科医の判断で背中に麻酔用のカテーテル(細いチューブ)を挿入します。
カテーテルの挿入方法
座ってあぐら、もしくは横向きに寝て背中を丸めた姿勢をとります。
背中の表面に痛み止めをしてから、背骨の中の脊髄神経を包む「硬膜」の外側のスペース(硬膜外腔)に針を刺します。
その針を使ってカテーテルを硬膜外腔に入れ、針は抜いてしまいます。
カテーテルを背中にテープで固定したあと、体の外側にあるカテーテル先端から麻酔薬を投与します。
お産の状況に応じ、硬膜外カテーテルを入れる前に硬膜に小さな穴をあけたり(硬膜穿刺硬膜外麻酔)、脊髄くも膜下腔に薬液投与(脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔)したりする事があります。
硬膜外無痛分娩は分娩時の痛みを軽減しますが、痛みが完全になくなるわけではありません。痛みが強い場合は安全な範囲で麻酔薬を調整します。チューブの位置の調整や、再挿入が必要な場合もあります。また、夜間休日は、麻酔科医が他の緊急手術の麻酔中の場合、無痛分娩開始が遅れたり間に合わなかったりする場合があります。
無痛分娩の副作用・合併症
硬膜外無痛分娩は赤ちゃんへ悪影響を及ぼすことはほとんどないといわれています。
陣痛が弱くなることがあり、分娩時間が延長し、陣痛促進剤の使用と吸引分娩・鉗子分娩の確率が上がるといわれていますが、帝王切開となる確率は変わらないとされます。また、出産後の母乳への影響もないとされています
(極めて稀だが起こる可能性のある重篤な合併症)
・局所麻酔薬中毒 : 麻酔薬の入れすぎ、または血管にカテーテルが入ったため起こります。
・高位・全脊髄くも膜下麻酔:カテーテルがくも膜下に入る(深く入る)ことで起こります。
・硬膜外血腫・硬膜外膿瘍:数万分の一の確率で背中の奥に血や膿のかたまりができ脊髄の神経を圧迫します
・アナフィラキシーショック : 主に薬剤のアレルギーが原因で起こります。
上記のような合併症は稀ですが、完全に防ぐことはできません。常に起こる可能性を疑い、起こった場合は集中治療室での管理など、必要な治療を行います。
(他の稀な合併症)
低血圧、過強陣痛、頭痛(硬膜穿刺後頭痛)、発熱、かゆみ、背部痛、排尿障害、下肢の神経障害など
一時的な症状であることがほとんどですが、原因に応じた治療を行います。
無痛分娩の実施について同意いただいた後、いつでも同意を取り消すことができます。また、説明をお聞きになった後で同意されない場合も、何ら不利益な取り扱いをいたしません。
詳しくはこちらをご覧ください。(無痛分娩教室動画/パンフレット)
希望での無痛分娩は保険診療範囲外のため、自費診療となります。当院の場合、通常は分娩費用に加えて117580円いただいております。医学的適応の無痛分娩の場合は保険診療となります。
当院での無痛分娩をご希望の方は、紹介状を持参の上、34週までには奈良県立医科大学附属病院産婦人科を受診してください。
診療実績
2020(7月以降) | 2021 | 2022 | 2023 | 合計 | |
分娩件数 | 362 | 732 | 723 | 819 | 2636 |
帝王切開 | 161 | 314 | 299 | 369 | 1143(43%) |
無痛 | 10 | 47 | 53 | 98 | 208(8%) |
無痛分娩後の分娩方法(208症例)
2020年7月以降合計 | |
経膣分娩 | 147(70%) |
器械分娩 | 33(16%) |
帝王切開 | 28(13%) |
無痛分娩に関するアンケート 満足度 平均7.5(0-10の11段階 未回答46)
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
4 | 4 | 6 | 6 | 4 | 12 | 7 | 15 | 32 | 18 | 54 |
急変時の対応
分娩フロアには救急カート(気道確保・緊急薬剤(脂肪乳剤含む))が常備してあります。
平日日中の急変時は、無痛分娩担当中の麻酔科医が対応します。夜間や休日の急変は対応中の産科医・助産師とともに当直の麻酔科医が対応します。
また場合により院内急変コールも行います。
危機対応シミュレーション
産科医・助産師・麻酔科医の多職種で年一回実施しています。
無痛分娩の担当者
当院の無痛分娩は
平日の日中:麻酔科医を中心とした管理
夜間や休日:麻酔科医のサポートのもと産科医・助産師を中心とした管理
を行っています。無痛分娩の硬膜外カテーテルの挿入と留置は麻酔標榜医/麻酔科認定医/麻酔科専門医/麻酔科指導医が行います。
無痛分娩管理者
麻酔科教授/川口 昌彦(麻酔科指導医 日本産科麻酔学会社員・日本周産期麻酔学会評議員・JALAカテゴリーA講習 修了)
麻酔科診療助教/川瀬 小百合(麻酔科専門医・JALAカテゴリーA講習 修了)
・当院は日本産婦人科医会偶発事例報告、妊産婦死亡報告事業に参画しています。
(ホームページ:2024年6月作成)